坂本工業では、来月よりパートタイマーを正社員に登用することとなった。今回のように正社員へ登用することは初めてであったため、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取扱いについて、社労士に相談することにした。

 先生、こんにちは。春が近づいてきましたね。

 そうですね。徐々に春の暖かい日差しを感じるようになりました。さて今日は、パートタイマーを正社員に登用するということで、相談があると伺っていましたが、どのようなことでしょうか?

 はい、総務部に優秀なパートタイマーがいるのですが、より大きな仕事を任せるために4月から正社員登用することにしました。雇用保険と社会保険については既に加入していますので、そのまま継続となりますが、年休はどのような取扱いになるのでしょうか?

 分かりました。まずは年休の付与要件について確認しておきましょう。年休の付与要件としては法令に以下の2つの定めがあります。

①雇い入れの日から起算して6箇月間継続勤務したこと
②全労働日の8割以上出勤したこと

 そうですね。当社でも入社から6ヶ月後に年休を付与しています。

 今回のご相談でポイントとなるのが①の継続勤務で、これは労働契約が続いている期間のことをいいます。この継続勤務については「勤務の実態に即し実質的に判断すべきもの」とされており(通達 昭和63年3月14日 基発150号)、具体的な例がとり上げられています。以下で主だったものを確認しておきましょう。

a)定年退職者の再雇用
 定年退職者を引き続き嘱託社員等として再雇用した場合には継続勤務とされます。ただし、退職と再雇用の間に相当の期間があり、客観的に労働関係が断続している場合は継続勤務とは判断されません。
b)パートタイマーやアルバイトの雇用契約の更新
 パートタイマーやアルバイトについて雇用契約の更新が行われ、その契約期間が6ヶ月以上になった場合で、引き続き雇用されている場合には継続勤務とされます。
c)パートタイマーやアルバイトの正社員登用
 パートタイマーやアルバイトについては、雇用契約を更新した以外に、正社員として登用した場合にも継続勤務と判断されます。

 今回はc)に該当するケースになりますね。

 はい。そのため、年休の付与はパートタイマーとして雇入れたときからの勤続年数に基づいて付与することになります。

 なるほど。それでは年休の付与はいつ行うことになるのでしょうか。

 年休は正社員に登用したからといって、改めて登用の際に年休を付与する必要はなく、次の年休付与の基準日が到来したときに付与することになります。

 4月に付与しなくても問題ないのですね。

 はい。具体的には下図のようになります。

【2010/4/1入社(週3日勤務のパートタイマー)の例】

 よく分かりました。付与のタイミングと継続年数を間違えないように取り扱う必要がありますね。

 そうですね。ちなみに、これまで付与している日数についても、パートタイマーから正社員になった際に消滅するわけではありません。付与済みの日数についても繰り越すことを念のためにお伝えしておきます。

>>>次回に続く



 今回は、正社員登用した際の年次有給休暇の取扱いを解説しましたが、ここで同じように実務的に判断に困る育児休業者に対する年休付与についても解説しておきましょう。育児休業者については、労働義務がないものの、継続勤務していることは明らかであるため、上記の②の要件が満たされるのか否かがポイントとなります。これについては法令で、労災により療養のために休業した期間や産前産後のために休業した期間、育児・介護休業をした期間については出勤したものとみなすことになっています。したがって、例えば1年間育児休業をしていた者については8割以上の出勤要件を満たし、年休が発生することになります。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。