坂本工業では、最近、休みがちな従業員がおり、その対応に困っていた。そこで、どのように対応すべきか、社労士に相談することにした。

 先生、こんにちは。新年度がスタートし、今年は新入社員が1名入ってきました。

 そうですか。初心を思い出し気が引き締まりますね。さて今日は、休みがちな従業員がいるということを伺っていましたが、どのようなご相談でしょうか?

 はい。入社5年目の従業員が、最近、休みがちになり、来たり来なかったりの状態を繰り返しています。連続して休むということではありませんが、遅刻も増え、無理をしているのではないかと心配しています。

 なるほど。社内ではどのような様子が見られますか?

 上司からは、単純なミスが多くなったり、同僚とあまり話をしなくなったということを聞いています。

 もしかすると、メンタルヘルス不調が考えられますね。

 メンタル不調ですか。当社ではこのようなケースは初めてなのですが、この従業員に対してどのように対応すればよいのでしょうか?

 まずは本人の負担にならない範囲で状況の確認し、必要に応じて心療内科などの医療機関で受診してもらうことが対応として考えられます。その受診結果を受けて、会社は必要な対応を判断しなければなりません。場合によっては休職させることになるかも知れませんね。ちなみに残業時間はどのくらいありましたか?

 月20時間くらいでした。少し残業が続いていましたが、さほど時間数が多くないので気にしていませんでした。残業が何か影響しているのでしょうか?

 過重労働を心配したのですが、この時間数であれば問題ないでしょう。近年、残業時間や仕事上のプレッシャー等の仕事のストレスが原因でメンタルヘルス不調になり、それが労災として認定されるケースが見られるようになっています。その認定基準として平成23年12月に出された「心理的負荷による精神障害の認定基準」が用いられており、その中に残業時間数やセクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメントなどの心理的負荷を与える項目などが挙げられています。

 会社として日頃のメンタルヘルス対策を行うにあたっては、残業時間がひとつポイントとなるのですね?

 はい。会社としては労働時間の管理を行い、もし長時間労働となっている従業員がいれば、36協定の範囲を目安としてできれば1ヶ月45時間に収まるようにしたいところです。また、長時間労働者については法令で医師による面接指導が義務付けられています。

 この面接指導とはどのようなものでしょうか?

 これは週40時間を超える残業が月100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められると従業員から申し出があった場合に、医師の面接指導を受けさせなければならないというものです。

 申し出があれば行うというものですね。これは従業員規模にかかわらず、行わなければならないのでしょうか?

 はい、すべての企業が対象となっています。また、会社のメンタルヘルス対策を考えると、従業員からの申し出を受けて行うのではなく、月100時間を超えた場合あるいは月80時間を超えた場合に機械的に面接指導を受けさせるといった対応も考えられます。

 従業員の健康のことを考えると、基準を厳しくして面接指導を受けさせておくことも一つの方法ですね。

 そうですね。残業時間以外ではやはり日ごろのコミュニケーションが重要になり、上司や同僚に相談しやすい雰囲気づくりも求められます。

 先月までは増税前の対応で、みな黙々と業務をしていましたので、声を掛けにくい雰囲気があったかもしれません。新入社員も入ってきましたので、お互い声掛けをして、明るい職場にしたいですね。

>>>次回に続く



 今回は、普段の労務管理で求められるメンタルヘルス対策についてとり上げましたが、ここで現場のキーマンとなる管理職に求められる対応について補足しておきましょう。管理職は従業員と接する機会が多いことから、日ごろの部下の様子をみて、いつもと違うところがないかアンテナを張っておくことが重要となります。たとえば以下のような様子が挙げられます。
 □遅刻、早退、欠勤が増える。無断欠勤がある。
 □残業、休日出勤が不釣合いに増える。
 □仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する。
 □報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)。
 □表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)。
 □不自然な言動が目立つ。
 □ミスや事故が目立つ。
 このような行動がみられた場合は、総務・人事担当者へ早めに連絡してもらうようにしておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「精神障害の労災認定」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/120427.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。