坂本工業では昇給を実施したことから、割増賃金の単価が上がることになった。人件費を見ていく中で、割増賃金を計算する際に出てくる端数処理について、社労士に相談することにした。

 先生、ゴールデンウィークも明け、これから夏に向かって徐々に暑い季節となっていきますね。

 そうですね。今年も暑い夏になるのでしょうか。さて、今日は、割増賃金の端数処理について質問があると伺っていましたが、どのようなことでしょうか?

 はい。当社では4月に昇給を行ったことから、わずかではありますが割増賃金の単価が上がりました。これまでは、給与計算ソフトの自動計算に任せていたため、意識したことがありませんでしたが、本来どのように取扱われるのか原則を教えていただけませんか?

 わかりました。割増賃金の単価の解説に入る前に、労働時間のカウントについて確認しておきましょう。労働時間は1分単位でカウントすることになっています。例え1分であったとしても切り捨てることは認められない、これが大原則となります。

 例えば、1日に38分残業した場合には、それは38分として取扱い、38分を30分のように切りのよい時間数に丸めることはできないということですね。

 はい。30分単位や15分単位に切り捨てて丸めているケースを時折見かけることがありますが、これは認められていません。このように1分単位が原則となりますが、事務を簡便にするという考えから通達(昭和63年3月14日基発第150号)において以下の取扱いをすることは違法ではないとされています。

①1ヶ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
②1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
③1ヶ月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、②と同様に処理すること

 例えば1ヶ月を集計し、それが25時間17分であった場合、簡便的に25時間とすることが可能ということですね。

 はい。25時間17分のときは25時間に時間数が減りますが、25時間45分であった場合には26時間として取扱うことになります。さて、本題の割増賃金の単価計算とその端数処理についてですが、先ほどの通達のように取扱うことは違法ではないとされています。

 当社の1ヶ月の所定労働時間は168時間となっていますので、例えば割増の対象となる賃金の合計額が25万円の場合、1時間当たりの賃金額は[25万円÷168時間=1488.095…円]と計算されます。この場合、1,488円としても問題ないということですね。

 その通りです。時間外労働の場合、これに割増率を掛け、時間単価は1,860円(1,488×1.25)となります。なお、割増率を掛けた際に円未満の端数が生じた場合は先ほどと同様に、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることが認められています。

 なるほど。実際の割増賃金はこの時間単価に時間外労働数を掛けて、支払うことになるのですね。

 はい。また、この割増賃金を計算する際に1円未満の端数が生じた場合は、上記③のとおり、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることが認められています。

 1時間当たりの賃金額を計算する際、そして1時間当たりの割増賃金額を計算する際、更には1ヶ月における時間外労働・休日労働・深夜労働の各々の割増賃金の総額を計算する際、それぞれの段階で端数処理が行われているのですね。

 はい。実際にどのように端数を処理するかは、実務上は給与計算ソフトの中で設定されているということになります。また不明点が出てきましたら、お気軽にご相談ください。

>>>次回に続く



 今回は、割増賃金の端数処理について解説しましたが、ここで1ヶ月の賃金支払期における端数処理についても補足しておきましょう。賃金を支払う際、労働基準法第24条において全額払いの原則が定められていますが、上記でとりあげた通達の中では、以下の方法については違法として取り扱わないとされています。

①1ヶ月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額。)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと。
②1ヶ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。

 近年は、銀行口座への振り込みにより給与の支給を行うケースが増加し、このような取扱いが必要になるケースは少なくなりましたが、これらの取扱いをする場合には就業規則にその定めをしておく必要がありますのでご注意ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。